詩
詩「まだまだ」◆存在に耳を澄ます
◆母が認知症になって亡くなるまで、二十年以上もの間、母と言葉を通して意思疎通をしたことがなかった。言葉に耳を澄ますことができなければ、その存在に耳を澄ますしかない。記号である言葉と違って、存在が放つものには明確な意味など存在しない。だから、その存在を感じて自分の中で自分なりの意味が生まれるのを待つしかないの...
◆母が認知症になって亡くなるまで、二十年以上もの間、母と言葉を通して意思疎通をしたことがなかった。言葉に耳を澄ますことができなければ、その存在に耳を澄ますしかない。記号である言葉と違って、存在が放つものには明確な意味など存在しない。だから、その存在を感じて自分の中で自分なりの意味が生まれるのを待つしかないの...
化粧 藤川幸之助 あの日、母の顔は真っ白だった。 口紅と引いたまゆずみが まるでピエロだった。 私の吹き出しそうな顔を見て 「こんなに病気になっても 化粧だけは忘れんでしっかりするとよ」 父が真顔で言った。 自分ではどうにも止められない 変わっていく心の姿を 母は化粧の下に隠そうとしたのか。 厚...
◆朝起きて鏡の中のくたびれ果てた自分の姿に、「コウノスケ、頑張れよ!」と声をかけてみた。その声が父にそっくりで、何か父に励まされているような感じになった。◆母は認知症になっても財布の中に、自分の父母の写真を大事に持っていた。この歳になっても「お父さん!お母さん!」かと驚いたが、いくつになっても親は親のままな...