BLOG「月のように生きる」

◆海辺で海を見つめながら並んでいる無数の丸い石を見ると、心臓病を患いながらも認知症の母を介護した父と、いつも寄り添い手をつないでいた二人の姿がありありと胸に浮かぶ。◆「もっと息子としてできることがあったのではないだろうか」。この問いが後悔のように、今でも夕日に色づく水平線から波に乗って打ち寄せてくる。今日は詩「二つの小石」を。◆11月27日(木)名古屋市昭和区役所講堂で講演をします。今年最後の講演となります。お時間の都合がつく方は、ぜひ会場まで足をお運びください。

二つの小石 
          藤川幸之助
父は認知症の母との生活を
日課表に書いて壁に貼っていた
それにあわせ
母といっしょに朝を迎え
母と食事をし
母と声を合わせ歌を歌い
母を座らせ母の化粧をしていた
久しぶりに帰省した息子のことなんか
ほったらかしで

夕刻には二人で手をつなぎ
戦時中には飛行場だった空き地を
二人で歌を歌いながら散歩をした
そして一日が終わり
二つ並べた布団に入り
手だけを出して
母が勝つまでジャンケンをした
淡々とした慎ましい生活
この繰り返し

    *

三人で川辺へ行った
石ころだらけの川辺だった
大きな石の間に小さな石
小さな石の間にもっと小さな石
みんな静かに寄りそい
川の流れをながめていた

大きな平たい石をえらんで
並んでこしを下ろして
父と母は川下を見つめていた
小さくすり減った二つの石だった
寄り添い支え合う二つの小石だった

私は投げるはずだった小石を
もとの場所へもどした 
できるだけ正確に
できるだけ静かに
「死ぬときには
 お母さんを連れて行きたいなあ」
と暮れ残る水面を見つめて
父が言った

©FUJIKAWA Konosuke
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◆昭和区介護フェスタ2025・支える側が支えられるとき
◆演題:「支える側が支えられるとき
〜認知症の母が教えてくれたこと〜」
◆講演日:2025年11月27日(木)
14:30〜16:00 【参加無料・申込不要】
◆講演会場:名古屋市昭和区役所・講堂
◆主催:昭和区役所地域包括ケア推進事務局
◆お問い合わせ:昭和区役所福祉課 電話052-735-3874
◆詳細は https://k-fujikawa.net/works/vkouen20251127/

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多くの方々に詩を読んでいただければと思っています。

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