2025年 3月の記事一覧

認知症の母の詩

詩「私の中の母」

私の中の母        藤川幸之助母よ認知症になってあなたは歩かなくなったしかし、私の歩く姿にあなたはしっかりと生きている 母よあなたはもう喋らなくなったしかし、私の声の中にあなたはしっかりと生きている 母よあなたはもう考えなくなったしかし、私の精神の中にあなたはしっかりと生き続けている 私のこの身体も私...

エッセイ

双六の母に客来てばかりをり◆詩「双六」

◆商売をやっていた父母は、年末年始は歳末の売り出しやら初売りの準備やらでとても忙しく、幼い頃一緒にゆっくり過ごした覚えなどない。私は出入りするお客をよそに、一人でテレビを見たり本を読んだりした。◆ほったらかした息子に申し訳ないと思ってか、初売りが一段落した頃に母が一緒に双六(すごろく)をしてくれた。「双六の...

詩「ただ生きる」谷川俊太郎 ◆「あとがき」詩

◆詩「生きる」ではなく、詩「ただ生きる」だ。「未発表の詩だから掲載したら」と何気なく渡された詩だったが、私の原稿をしっかりと読み込んで、私の詩集『満月の夜、母を施設に置いて』(中央法規出版・2008年)の「あとがき」のために書き下ろされた詩だった。◆認知症の母が亡くなって作った詩集『徘徊と笑うなかれ』(中央...

エッセイ

追悼◆詩人・谷川俊太郎◆「じゃあねえ」はまた会う言葉

◆今日の写真は詩人の谷川俊太郎さんとの写真だ。黒のポロシャツを着て、顔をぐちゃぐちゃにして喜んでいるのが私。詩集『満月の夜、母に施設に置いて』(中央法規・2008年)を共著で作った。その詩集完成の打ち上げの食事会でのひとこまだ。この時、「お母さんが亡くなられた後、藤川さんがどんな詩を書くのか楽しみだな」と谷...