認知症の母の詩
詩「化粧」
化粧 藤川幸之助 あの日、母の顔は真っ白だった。 口紅と引いたまゆずみが まるでピエロだった。 私の吹き出しそうな顔を見て 「こんなに病気になっても 化粧だけは忘れんでしっかりするとよ」 父が真顔で言った。 自分ではどうにも止められない 変わっていく心の姿を 母は化粧の下に隠そうとしたのか。 厚...
化粧 藤川幸之助 あの日、母の顔は真っ白だった。 口紅と引いたまゆずみが まるでピエロだった。 私の吹き出しそうな顔を見て 「こんなに病気になっても 化粧だけは忘れんでしっかりするとよ」 父が真顔で言った。 自分ではどうにも止められない 変わっていく心の姿を 母は化粧の下に隠そうとしたのか。 厚...
◆朝起きて鏡の中のくたびれ果てた自分の姿に、「コウノスケ、頑張れよ!」と声をかけてみた。その声が父にそっくりで、何か父に励まされているような感じになった。◆母は認知症になっても財布の中に、自分の父母の写真を大事に持っていた。この歳になっても「お父さん!お母さん!」かと驚いたが、いくつになっても親は親のままな...