◆このところ音楽の中の詩の話から入ることが多い。人のフンドシで相撲を取っているようでとても恐縮だが、今日も好きなミュージシャンの話から。私の大好きなソール・フラワー・ユニオンというバンドがいる。その楽曲の大部分を書いている中川敬の歌詞がとにかくいい。中でも「満月の夕(ゆうべ)」。1995年の阪神淡路大震災の直後、神戸と大阪を中川が往復する中で出来上がったこの曲の中に、次のような歌詞がある。「解き放て いのちで笑え 満月の夕」◆「いのちで笑う」とは何なのか。生きていると、辛いことや悲しいこと、誰にも言えず思い悩むこと、死にたいほど苦しいことがある。私にも何度も何度もあった。でも、その一つ一つを振り返ってみると、その辛さや悲しみ、悩み、苦しみは、当時は激しい心の痛みではあったが、いつしかなくなって、それが今のこの喜びや幸せに不思議とつながっているときがあるものだ。◆運命や死のように私たち人間の力ではどうにもできないことがある。それに打ちひしがれ、立ちすくみ思い悩んでも、自分の力ではどうすることもできず、あきらめるほかないときがある。そんな時は悩みを手放して、笑い飛ばして、今を生きて生きて生き抜くしかないのだ。そうすれば、あきらめることで見えてくる道があって、きっとそれが次の喜びや幸せにつながっていく。これが「解き放て いのちで笑え」ではないのかと思う。◆今日は、詩「道」とその詩が掲載されている詩集のポストカードを。
道
藤川幸之助
何度も転んだ。
何度も何度も立ち上がった。
そのたびごとに地団駄(じだんだ)踏(ふ)んで
踏み固めてきた私の道は
あの山を越(こ)え
私はまだ見たこともない私に出会い
あの海に行き着き
人の悲しみの深さを知った。
顔に当たる風の強さで感じるのだ。
血のにじむ膝(ひざ)の痛みで感じるのだ。
立ち上がり歩み出す私の一歩が
転ぶごとに力強く大きくなっていることを。
あの悲しみから踏み出したその一歩が
この喜びへつながっていることを。
私をつまずかせた石ころの中に
転んだ私の心の中に
私の明るい未来は潜(ひそ)んでいる。
何度も何度も立ち上がり
大粒の汗をしみ込ませて
道が私の道になっていく。
(『命が命を生かす瞬間』より)
(『命が命を生かす瞬間』より)
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