二十数年変わらないこと◆詩「ぼくの漁り火」

◆私のfacebookページを探し当てた友人からメッセージが届いた。「今、私の手元に平成3年7月発行の『日本児童文学』があります。その中に『ぼくの漁り火』という藤川さんの作品があり、今読んでいました。これは藤川さんから頂いた本です。すごく嬉しそうに俺に下さったのを覚えています。アパートに遊びに行って不在やったんで、これは絶対に海にいるはずと思って車で向かったら、藤川さんが1人で海辺に座っていたのを懐かしく思い出します。」◆同期に教職に就いた友人からの久しぶりの便り。メールのくだりは、二十代の頃、日本児童文学者協会の賞をもらって、その作品が雑誌に掲載された時のこと。自分の作品が活字になって、人の目に触れることがなんと嬉しかったことか。詩を書くことが楽しくてしょうがなかった。あれからずっと詩を書き続けているんだと今更ながら思った。詩を書くその喜びは今も変わらない。母の介護を体験したせいか、若い頃からすると私の人生すっかり変わってしまったと思っていたが、変わらないものもあるのだと思った。そういえば、今でも私は時間があれば一人で海辺に座っている。その『ぼくの漁り火』という詩を。

月から降りてくる人

 

 

 

 

 

 

絵・藤川幸之助

 

ぼくの漁り火
          藤川幸之助
ぼくの父ちゃんは
日がくれかかると
小型船にのりこんで
夕日へ向かう
しばらくすると
真っ赤に光る
水平線の上に
星となって輝きはじめる
そのうちに
隣のおいちゃんも
ノブの父ちゃんも
みんな輝きはじめる

水平線が消え
二倍にふくらんだ
大きな夜空に
どんな星座よりきれいな
一直線の星座が見える
父ちゃん達の漁り火座が見える
その中でも
汗を流し
海をもっとしょっぱくしている
父ちゃんの星は
一番光っている
夜空のどんな星より
輝いている

大きな空から
父ちゃんの星から
ここに打ち寄せてくる波は
父ちゃんの掛け声なのだ
「ヨイセ ヨイセ ホイセ ホイセ」
ちょっと冷たくなった
海に手をつけて
父ちゃんのあったかさを感じた
詩集『こころインデックス』銀の鈴社