若者に向けた詩◆詩「見えない矢印」

◆原稿の管理が悪い私にはよくあることだが、若い頃の原稿がごっそりと出てきた。三十数年前に書いた子ども向けの詩の原稿なのだが、どれもよく覚えていない。読み進めていくと自分なりに納得して書き上げたつもりなのだが、どれもこれも赤を入れたくなる。三十数年経ったからと言って、決して詩の腕は上がっているわけではないので、経験だけ重ねて小うるさくなっただけなのだろうか。◆今日の詩「見えない矢印」は、雑誌に掲載した記録が残っていた詩を推敲したもの。◆せっかくなので、しばらくは母の詩と2本立てで、若者達に向けた詩にもお付き合い願いたいと思っている。
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見えない矢印
   藤川幸之助

道路の上の大きな白い矢印。
これに沿っていけば
私は迷わずにあの場所にたどり着ける。

人の心の中にも
見えない矢印があって
それぞれの矢印が
ひとつひとつそろい大きな矢印になり
いつの間にか戦に向かったことがあった。
多くの命が戦の中で消えていった。

その矢印の指す遠く遠く
その先から吹く風の中に
微かな戦のざわめきが聞こえはしないか。
その矢印が自分の向きと
少し違いはじめたとき
それを拒むことができるか。
自分たちの幸せのために
向けられているその矢印が
他の人たちの幸せを
打ち砕いてはいないか。

これに沿っていけば
私は迷わずにあの場所にたどり着ける
のかもしれない。
しかし、矢印に迷わず向かわされ
心の中の見えない矢印が
見えはじめたとき
もう一度私は自らに問う
この矢印の向く先に
戦はないかと。

©FUJIKAWA Konosuke
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多くの方々に詩を読んでいただければと思っています。

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