詩「まだまだ」◆6月6日(木)NHK・FM・R1「ラジオ深夜便」出演

◆NHK・FMとラジオ第1の「NHK ラジオ深夜便アーカイブス」(6月6日(木)午前1:05〜午前2:00)で「認知症と向き合う」詩人・児童文学作家  藤川幸之助が再放送されます。ロングインタビューです。是非お聞きください!  https://www.nhk.jp/p/shinyabin/rs/V34XVV71R2/blog/bl/p6qdzjPqr1/bp/pKy1ZVOrOK/
◆お聞き逃しの方は以下の「NHK らじる★らじる」で聞くことができます。「NHK らじる★らじる」は6月5日(水)放送分(水曜日放送分)で聴けます。 https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/corners.html?p=0324
◆今日は詩「まだまだ」。母が認知症になって二十年以上の間、母と言葉を通して意思疎通をしたことがなかった。言葉という意味の中で、私たちはつながって生きているのではないと思った。存在と存在の間で、そのつながりを深く感じながら、自らに生きる意味を問い続けていく。それが生きていることではないかと感じていた。言葉なんかなくても、人は深くつながることができると思うようにもなったが、言葉で自分の思いを伝える仕事をしながら、これはいかがなものかとも思う。
言葉facebook02
まだまだ

               藤川幸之助

母の心臓はもう限界で
いつ止まってもおかしくない状態だ
と、医師から説明を受けた
ここまで母はがんばりましたから
もうゆっくりさせてあげたい
と、私は答えた
そう言ったのに、病室にもどると
「母さんもう精一杯か?
 もう少しがんばってくれんね?」
と、母の耳元で言っている
私の涙が母のおでこを静かに伝って
タオルにしみこんでいった
母の隣に座ってリンゴをむいた
皮がむかれたリンゴは
言葉をなくした母のように静かだった
認知症で言葉を失って二十年
私が言葉で問いかけ
いつも言葉ではないもので母は答えた
まだまだ
まだまだまだだ
まだまだ生きていてくれ
何度も何度も心の中で繰り返しているうち
母のいない明日から届く
母からの答えのように響く
「お前はすぐくじけるんだから
 まだまだ
 まだまだまだだ」
と許してくれなかった母の厳しい目を
鏡の中の自分自身の顔の中に見つける
『支える側が支えられ
   生かされていく』致知出版より
みなさま、宜しければ「シェア」をしていただければ幸甚です。
©FUJIKAWA Konosuke
【詩・文】藤川幸之助