【お家で読む1ダースの詩 #9】藤川幸之助

5/4.5.6.7
12日間、12篇の詩をお送りしています。家で、力を抜いて、開いて、読んで、閉じて、また明日。詩の12日間。

バス停のイス
         藤川幸之助
バス停にほったらかしの
雨ざらしのあの木のイス。
今にもバラバラに
ほどけてしまいそうな
あのイス。

バスを待つ人を座らせ
歩き疲れた老人をいこ憩わせ
バスに乗らない若者の談笑につきあい
時にはじゃま者扱いされ
けっとばされ
毎日のように
学校帰りの子どもを楽しませる。

支える。
支える。
くず崩れていく自分を
必死に支えながらも
人を支え続け
「それが私なんだもの」とつぶやく。

そのイスに座り
そのつぶやきが聞こえた日は
どれだけ人を愛したかを
一日の終わり静かに考える。
少しばかり木のイスのよいん余韻を
尻のあたりに感じながら
〈愛〉の形について考える。
©Konosuke Fujikawa

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©Konosuke Fujikawa【詩・写真*藤川幸之助】
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