NHK・Eテレ・ハートネットTV選 「あなたの中の私を失う時▽認知症の母を詠む 詩人・藤川幸之助」が、2019年10月10日(木)午後1時05分 〜 午後1時35分にNHK・Eテレでアンコール放送されます。4年前に見逃された方は、今回是非ご覧ください。今日はその番組の中で朗読されている詩「この手の長さ」と詩「母の遺言」でお楽しみください。
◆◆ 「あなたの中の私を失う時▽認知症の母を詠む 詩人・藤川幸之助」◆◆
https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/heart-net/1168/
【NHK・Eテレから】アルツハイマー型認知症を患った母を24年にわたって介護した藤川幸之助さん。84歳で母が亡くなるまで人生の半分近くを母に寄り添った。言葉も無く、ゆっくりと死に向かいつつも生きる母、それに向き合っていない自分に気付かされ、母とともに生きることを決意し、その思いを詩の言葉に紡いでいった。-言葉のない母が 私に問いかける 命とは何か 生きるとは何か 死とは 老いた母が その存在から 私に問いかける-
◆この手の長さ◆
藤川幸之助
背中のあたりがかゆくて苦しんでいると
「一人では
何でもかんでもできないように
手はちょうどいい長さに作ってあるのよ」と母は言って
私の背中の手の届かないあたりを
かいてくれた
そんなに言っていた母も認知症になり
母一人では何にもできなくなった
母一人では渡れない川を
二人で渡りきろう
母一人では登れない山を
二人で越えよう
人が孤独にならないように
人が愛で引き合うように
人が人を必要とするように
人が傲慢にならないように
この手をこのちょうど良い長さに
作ってあるに違いない
私にもとうてい一人では
できないことがある
できない二つのことが
母と私とで
できる二つのことになる日が
来るのかもしれない
私の人生の地図の一部が
母の中にあり
母の人生の地図の一部が
私の中に
きっと潜んでいるに違いない
『満月の夜、母を施設に置いて』中央法規出版より
◆母の遺言◆
藤川幸之助
二十四年間母に付き合ってきたんだもの
最期ぐらいはと祈るように思っていたが
結局母の死に目には会えなかった
ドラマのように突然話しかけてくるとか
私を見つめて涙を流すとか
夢に現れるとかもなく
駆けつけると母は死んでいた
残ったものは母の亡骸一体
パジャマ三着
余った紙おむつ
歯ブラシとコップなど袋二袋分
もちろん何の遺言も
感謝の言葉もどこにもなかった
最期だけは立ち会えなかったけれど
老いていく母の姿も
母の死へ向かう姿も
死へ抗う母の姿も
必死に生きようとする母も
それを通した自分の姿も
全てつぶさに見つめて
母を私に刻んできた
死とはなくなってしまうことではない
死とはひとつになること
母の亡骸は母のものだが
母の死は残された私のものだ
母を刻んだ私をどう生きていくか
それが命を繋ぐということ
この私自身が母の遺言
『命が命を生かす瞬間』東本願寺出版より
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多くの方々に詩を読んでTVを見ていただければ幸甚です。
©Konosuke Fujikawa【詩・文*藤川幸之助】
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