「彼岸」が向こう岸に広がる生死を超越した悟りの世界であるのに対して、この「此岸(しがん)」とは、迷いと悩みの多いこちら側の現実世界のこと。先週は詩「彼岸花」でしたが、今週は詩「此岸花」をどうぞ。【詩・写真・コメント*藤川幸之助】
此岸花(しがんはな)
藤川幸之助
この秋に
あなたを探すけれど
彼岸花よ
あなたはもうどこにもいません
あなたが花束のように咲いていた
この道ばたにあなたはいなくても
あなたを抱きしめて
泣いた私の中には
あなたは生き続け
この道の消えるところから照らす
あなたの優しさに導かれて
私は誰かを愛そうとするのです
あなたが飛び石のように向かっていた
あの青空の下にあなたはいなくても
真っ赤に咲いて見つめていた
あなたのまなざしは
私の中に生き続け
この秋の空の彼方に消えてしまった
あなたのこの今をあなたの分まで
私は生き抜こうとするのです
あなたのいないこの秋空の下
姿は見えなくても
あなたは私の中に咲いています
此岸花
あなたがこの世で咲いています
此岸花
私となって咲いています