◆私の住む長崎では梅が咲いた。菜の花も咲き始めた。白木蓮のつぼみも今まさに開こうとしている。他の季節のときにはあまり感じないが、春が来たときだけは「また新しく始まった」という感じがする。前の季節が冬だからだろうか。これが夏や秋だったらこんなふうには決して感じないはずだ。◆そんなことを考えながら、今日はポールマッカートニー(Paul McCartney)の「NEW」を聞いて一日をはじめた。コーヒーを飲みながら聞き流していたが、「We can do what we want.We can live as we choose.You see there’s no guarantee. We’ve got nothing to lose.」の歌詞に反応してしまった。「ぼくらは好きなようにできる。自分で選んだ道を歩いて行ける。保証なんてどこにもないけど、失うものももう何もない。」と訳せばいいのだろうか。十数年前教師を辞めて、詩人として独り立ちした日のことを思い出して、「また、一丁やってやろうか!」という気になった。◆そして、30年ほど前の白木蓮の白色を思い出した。高校を卒業して直ぐの春だった。十代の私は不安に押しつぶされそうだった。途方に暮れていた。そんな時、白木蓮の真っ白の花が目にとまった。その白を見ながら、「詩人になりたい!」と思った。来る日も来る日も何編も何編も白い紙の上に詩を書いた。そんな日々を思い出した。◆ポールは歌詞の中でこう曲を締めくくる。「Then we were new….Now we are new.」と。「そして、生まれ変わった。今、世界は新しくなったんだ。」なんと力強い言葉。そして、その曲に力をもらい先ほど書き上げた詩「春の詩(うた)」を今日はどうぞ。◆◆◆忘れてはならない2011年3月11日東日本大震災。その大震災で、被災された方々のいまだ癒やされぬ悲しみに詩「春の詩」を捧げる。
春の詩 ~3.11の悲しみへ
藤川幸之助
頭を出して
ふと周りを見わたすと
まだ北風が吹いていた
何でこんなときに
出てしまったのかと
蕾は思った
でも、こんなときにも
私は咲けるんだと
蕾はすぐに思い返して力を込めた
冬の中じっと耐え抜いた
あの悲しみが力となって
この私が開いていくのが分かる
北風が花びらを揺らした
この春のはじめ
花びらと同じ色の雪の降る寒い朝
春に咲くのではない
春を咲かせるのだと
祈るように花は
その白い花びらに刻んだのだ
2014/03/07