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■ 「宇宙遊泳」 (詩集 『マザー』ポプラ社より) 藤川 幸之助
 
■ 音楽 家高 毅
    ブラック・シープ・ラブ
(Sword Wind 風の剣に乗せてより)
■ 語り 村山 仁志
■ 構成 松本 篤彦

木の箱に入れてある
私のへその緒
そのへその緒がしまってある
タンスの横のテレビで
初めて宇宙遊泳の映像を見た
宇宙ロケットアポロの映像だった
この時あの命綱が切れてしまえば
どこまでもどこまでも
真っ暗な宇宙の闇を
たった一人で浮遊し続ける
と父から聞いた
その時私は母にしがみついた

母のお腹から出てきて
宇宙遊泳を始めて三十六年
「息子である」という命綱も
もう古びて
切れそうになっている
それどころか
私のつながれている宇宙船が
操縦不能になってしまって
私がその頼りない命綱で
宇宙船を引き寄せたり
右へやったり左へやったり
時にはおしめを代えたり
その宇宙船を
寝かしつけてから
宇宙の暗闇に漂いながら
もうこの命綱を切ってしまおうかなと

ふと夜中目を開けると
私の宇宙船が
私の命綱の絡まりをほどき
そのほころびを繕っていた
そして
私の体にふとんを
かけ直していた
私は
寝ているふりをした

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