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■ 「カステラ」 (詩集 『マザー』ポプラ社より) 藤川 幸之助
 
■ 音楽 家高 毅
    センチメンタル・サンデー
(Sword Wind 風の剣に乗せてより)
■ 語り 村山 仁志
■ 構成 松本 篤彦

包丁が容易に入り込めない
やわらかさ
切ろうとすると
切ろうとする力の分だけ
カステラはひっこんでしまう

母の柔らかさを左手で確かめながら
母から手渡されたカステラを
右手で握って食べた

母に向けて笑っても
母を嫌っても
母に怒鳴っても
母に泣きついても
私の心の力の分だけ
ただ母は柔らかくひっこんでそばにいてくれた

包丁をふきんでぬらして切ると
よく切れるのにと
みんなは教えてくれるけど
私は切れにくいままカステラを切る

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